【毎日の発酵食生活×栄養摂取】
- 発酵の知られざる歴史
- 発酵とは
- 発酵に関わる3大微生物
- 発酵食品の効果
まずは、発酵の歴史からご紹介させていただきます。
発酵というと「食品」を連想しがちですが、それ以外の分野でも利用されてきました。第一次世界大戦中、大量生産されたダイナマイト。その主原料は「グリセリン」をもとに作られるニトログリセリン。ドイツのカール・ノイベルグが、糖を発酵させる過程でグリセリンの大量生産方法を発見しました。追ってすぐに、イギリスやアメリカでも別の発酵方法で大量生産する方法が発見されました。
忌まわしい戦争の道具としても利用された一方で、人類において革新的な進歩ももたらしました。微生物の力を利用した「抗生物質」です。アオカビから見い出された世界初の抗生物質「ペニシリン」は、イギリスの細菌学者、アレクサンダー・フレミングが偶然発見しました。
日本においても、1957年に梅澤濱夫博士が日本初の抗生物質「カナマイシン」を発見。不治の病とみなされがちだった結核に対して大きな効果を発揮しました。
簡易な発酵で大量生産を促すことは、いわば「日本のオハコ」。味噌や醤油など、昔から発酵技術に親しんできた日本ならではのテクノロジーといえるでしょう。
では、発酵食品って、何?
発酵⾷品とは、大豆、米、麦、魚、肉などの原料に含まれるタンパク質やデンプン質などの栄養素を細菌、麹カビ、酵母菌などの微生物が分解し、うまみ成分であるアミノ酸やアルコール、乳酸などが生成されたものを加工した食品を指します。
発酵には、主に3種類の微生物が関わっています。
カビ | 麹菌(日本酒、醤油、味噌) | ||
青カビ、白カビ(チーズ) | |||
カツオブシカビ(鰹節) | |||
酵母菌 | 酵母菌(酒類、パン、醤油、味噌) | ||
細菌 | 乳酸菌(ヨーグルト、漬物) | ||
酢酸菌(酢) | |||
納豆菌(納豆) |

乳酸菌
乳酸菌は、糖類などの炭水化物を分解して乳酸を作る細菌の総称。ブルガリア菌、ガセリ菌、ラブレ菌など、何百以上もの種類があります。乳酸菌は有用菌の代表でもあり、有用菌を増やして腸内環境を整え、免疫細胞を活性化する働きがあります。血液中や組織に存在する免疫細胞の「マクロファージ」を活性化させる働きもあり、異物に対する攻撃力がより高まります。
納豆菌
納豆菌は、納豆を作るのに欠かせない、枯草菌(こそうきん)という菌の一種です。熱や酸に強く生きたまま腸まで届き、腸の働きを高めたり、有用菌を増やす働きがあります。
麹菌
麹菌は麹を作るためのカビの一種で、味噌やしょうゆ、みりんなど、日本由来の調味料や発酵食品に使われています。麹菌が生成する酵素の力で、体内での消化吸収を良くしたり、酵素から生み出されたオリゴ糖をエサにして有用菌が活性化され、免疫力アップにつながります。
酢酸菌
酢酸菌はアルコールをお酢の成分の酢酸に変える細菌で、お酢を作るのには欠かせません。腸内の免疫細胞にある免疫システムのスイッチを刺激して活性化させ、免疫力を高めてアレルギー症状を抑える働きがあります。
酵母菌
酵母菌は糖をアルコールと炭酸ガスに分解する菌で、お酒の醸造やパン作りに使われます。また、消化吸収されずに、ダイレクトに腸内の免疫細胞に働きかけて免疫力を高めるβグルカンも含まれています。
発酵食品の効果① 栄養をスムーズに吸収させる
発酵食品は、麹カビや酵母、細菌などの微生物の働きによって原料成分の栄養素が分解されています。そのため、消化吸収しやすい状態になっています。
しかも乳酸菌や麹菌、納豆菌、酵母菌、酢酸菌などの善玉菌が豊富に含まれているため、腸内環境が整い、栄養をスムーズに吸収して体内に巡らせることができるのです。
発酵食品の効果② 免疫細胞を活性化させる
私たちを病気から守ってくれる免疫機能。発酵食品は、その免疫細胞の活性化を手伝ってくれます。乳酸菌や麹菌などの菌体は、体内の免疫細胞の約70%が集まる小腸壁の近くを通る際に、免疫細胞を活性化させる"指令ボタン"を押していくことが最近の研究で分かりました。中でも、味噌や納豆、甘酒、キムチ、なれ寿司などが有効であるといわれています。
この免疫細胞を活性化させる"指令ボタン"を押すという働きは、生きた菌体も死んだ菌体も同じように持っています。例えば、多くの乳酸菌を含む味噌。味噌汁を作る際に加熱をしたことで乳酸菌が死滅しても、免疫細胞を活性化させる作用は変わりません。つまり、どんな食べ方をしても発酵食品は免疫細胞を活性化させるのです。また、腸自体が健康であることも免疫アップのカギ。腸内を常に善玉菌優位の環境に整えておくためにも、善玉菌が豊富に含まれている発酵食品を積極的にとるとよいでしょう。
発酵食品の効果③ 栄養価アップ
微生物が発酵過程で多量の栄養成分を生産してくれるため、食品の栄養価が高まります。例えば納豆に含まれるビタミンKはゆでた大豆の120倍にも!
発酵食品の効果④ 旨味成分アップ
煮た大豆と比べ、味噌や納豆には特有の味と香りが生まれます。また、発酵によりタンパク質が分解されて旨み成分のグルタミン酸ができるため、より「美味しい」と感じるのです。
発酵食品の効果⑤ 保存性を高める
微生物には自分以外の微生物の生育を阻止または死滅させる作用があります。そのため、ある一定量を占めると、悪玉菌である腐敗菌が駆逐されて腐りにくくなります。
発酵食品の効果⑥ 生活習慣病を予防する
例えば、味噌やしょうゆ、納豆など大豆の発酵食品には、血管壁に付着した悪玉コレステロールを除去したり、高血圧を予防したりする作用があります。
発酵食品の効果を知るうえで、どんな発酵食品をお勧めしましょうか。
実はピクルスとぬか漬けです。
ぬか漬けには、野菜などの植物を発酵させる乳酸菌が含まれています。より強く胃酸や胆汁酸に負けずに生きたまま腸まで届く可能性が高く、腸内の有用菌を増やして腸内環境を整える働きがあります。
加熱をしないぬか漬けは、漬ける野菜の栄養素が損なわれる心配がありません。また、野菜が発酵する過程でビタミン類も増加するため、免疫力アップにつながります。